終了式
「レンジャー戦闘隊、まわれー右!」
約2000人の各部隊と向き合う形となった。
「婦人自衛官の皆様から学生一人ひとりに月桂冠が送られます」
「レンジャー学生は鉄帽を右手に持て!」
鉄帽を取り、右手に持った。
俺達の頭に月桂冠が被せられた。
勝利の栄冠である月桂冠は、月桂樹の枝葉を輪にして冠としたものだが、顔にべったりとドーランを塗り、山奥から帰って来たばかりの俺達は、葉っぱの冠を被るとジャングルの部族に見えなくもない。
目の前には出迎えてくれた多くの部隊の人達。自分の帰る中隊も近くに見える。
集まって頂いた皆さんに、学生を代表して学生長がお礼の言葉を述べた。
そして終了式の最後、連隊長からの訓示の中で、
「君達はレンジャーとしてはまだ生まれたばかりだ。今後はそのレンジャーバッジをより輝くものとしてほしい。そして連隊のため、ひいては日本のために頑張ってもらいたい」
という言葉が心に残っている。
レンジャー養成訓練は終わった。だがそれは、レンジャー隊員としての始まりにすぎない。レンジャーバッジを手に入れた瞬間、俺達は新たなスタートをきっている。
「連隊長に敬礼」
「部隊気を付けーー!」
「敬礼!」
「なおれ!」
盛大な終了式が終わり、各部隊は解散となった。
俺達は各個にそれぞれの所属する中隊長のもとへ行き、レンジャー訓練の終了報告を完了させた。
中隊長は訓練期間中、何度も激励に来てくれた。
この中隊から送り出した1名として、期待をかけてくれていたのだ。
その期待に応えることができた。こんなに幸せなことはない。
終了報告を完了すると、俺達は室内に入るよう言われた。
用意された部屋で、学生の両親や友人、上司、先輩に囲まれて軽い食事も取り、長距離離脱の疲れを癒した。
俺はレンジャーバッジを両親に見せた。
両親は感心しながらも俺のからだを心配そうにしていた。
実際に、最終想定で10kg近く体重が落ちていた。
だが気持ちはすごく充実していた。
これからは何でも新鮮な気持ちでやれそうだ。
山の中であれもしたいこれもしたいと考えていたことを全部やってやろうと思った。
それを考えていて気がついた。
レンジャー訓練で味わった困難や極限状態に比べれば、自分はなんというたやすい世界に戻ってきたのだろうと思った。
それは驚きとともに、大きな発見だった。
俺は変わり、世界が変わった。
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