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元レンジャー隊員のブログ

役立つコーチングの知識  >>  リスニングの技術

リスニングの技術

コーチングにおけるリスニングの技術とは、話し手が話をしやすいように聞き手がリードすることであり、そのためには次の3つの技法が効果的である。

1.ペーシング(波長を合わせる)
2.バック・トラック(繰り返す)
3.キャリブレーション(観察する)
4.ブレイク・ステート(転換)

1.ペーシング(波長を合わせる)

これは、相手と波長を合わせる技法で、相手を知り、ラポール(親密な関係)を築くのに有効である。

コミュニケーションがどのような要素で行なわれるかを、UCLAの心理学者アルバート・メラビアン博士が測定した結果、次のことがわかった。

  • 見た目、しぐさ、表情、態度などが55%
  • 声の質、大きさ、速さなどが38%
  • 言葉、話す内容が7%
つまり、言葉以外の要素で93%のコミュニケーションが行なわれているというわけである。これは「メラビアンの法則」という。他にも、「第一印象は6~30秒で決まり、人間の情報収集は視覚によるものが83%を占める」という研究結果もある。

ラポールは言語、非言語ともに、相手と共通するものを見つけることによって創り出すことができる。

具体的には、視線・表情、姿勢・しぐさ、話し方(スピード・声のトーン・間)、話す内容などを可能なかぎり合わせることで、相手の情報が入りやすくなる。相手の状態を鏡に映すように真似ることから、ミラーリングともいう。ただし不自然にならないように。

(1)視線と表情を合わせる
  • 目は心の窓という。本人が意識していない心情でも目に表れている。(瞳孔の大きさなど)
  • 視線を合わせるのは「話を聴いていますよ」というメッセージでもある。相手が見つめられるのが苦手なタイプなら適度に。
  • 目線の高さを合わせる。お互いに相手に対して見上げたり見下す位置関係にならないように。
  • 相手が嬉しい顔をしているときは、こちらも嬉しい顔を。悲しい顔のときは、こちらも悲しい顔で。
(2)姿勢としぐさを合わせる
  • 相手が座っているならこちらも座り、立っているならこちらも立つ。
  • 足を組んでいるならこちらも組んでみる。伸ばしているならこちらも伸ばしてみる。
  • 動きの大きい人なら大きく、小さい人なら小さくする。
  • 動きの早い人なら早く、ゆっくりな人ならゆっくりとする。
  • 相手が飲み物を飲んだらこちらも飲むなど、動作を合わせる。
  • 耳を触るとか、手をたたくとか、腕を組むとかの相手のしぐさを真似てみる。
  • 呼吸を合わせる。
  • 一緒に笑う。
  • 状況によって対面かとなりに座るかを変える。(会議では対面側に座らないなど)
  • まばたきを合わせる。スピード、頻度。
  • 身体の筋肉の力の入れ具合を合わせる。
  • 物の置く位置を鏡に映したように合わせる。
  • 服装を合わせる。
  • アクセサリーを合わせる。
(3)話し方(スピード・声のトーン・間)を合わせる
  • 早口な人には早く、ゆっくりな人にはゆっくりと話す。
  • 声のトーンの高い人にはこちらも高めで、低い人にはこちらも低めで。
  • 間の短い人には短く、長い人には長めにとる。
  • テンションの高さを合わせる。
(4)話す内容を合わせる
  • 当然のことながら、相手の話を聴くわけであるから、相手の話題を中心にする。
  • 共通の話題、共通の体験を話す。
  • 言葉使いを合わせる。「話が見えてきましたか?」と聞かれた場合、正:「見えてきました」誤:「わかりました」「理解できました」あるいは、「赤いレバーをカチッと引くんですね?」と聞かれた場合、正:「カチッと引いてください」誤:「しるしのところまで引いてください」「ギュッと引いてください」など。
  • 相手のよく使う口ぐせを使って表現してみる。「私的には~」「ぶっちゃけ~」とか、あるいは方言の「めっちゃ~」「ごっつう~」「どえらい~」などをさりげなく差し挟む。

相手の状態にペーシングして無意識のラポールが形成されると、その人を新たな態度に導くことが可能になる。徐々に自分の状態を変化させて、相手がそれについてくる機会を与えるようにする。

2.バック・トラック(繰り返す)

相手の言ったことを繰り返すことによって、次の効果がある。

(1)内容を要約し、確認する
(2)共感を示すことによってラポールがとれる
(3)こちらの考える時間をつくる
(4)次のステップに進む

どのような内容だろうと、まずは共感的理解を示すこと。相手の言動の一つひとつに反応するのは人間的な幅、器の狭さである。

誤解のないように内容をきちんと確認したいときはもちろんのこと、考える間がほしいとき、流れを変えたいときにはバック・トラッキングが有効である。

「ということは、昨日は彼女に会えなかったんだね」(内容要約・確認)
「それで君としては、時間をかけて行ったのに会えなくて、少しがっかりしているわけだね」(共感)

3.キャリブレーション(観察する)

キャリブレーションとは、五感を研ぎ澄まして相手を感じること。視覚では顔色や汗のかき具合、筋肉の細かな動きや変化など。聴覚では声や呼吸の調子、足音やドアノブを回す音など。触運動覚では握手したときの手の温度など。相手がどういう状態か、何が起きているのかを観察する。

4.ブレイク・ステート(転換)

問題となる行動を導く心理状態のことを「スタック」といい、自分で望む方向に向かう心理状態のことを「リソースフル」という。

ブレイク・ステートは相手にリソースフルな状態を保たせるため、あるいは、スタックした状態から開放させるために行なう。たとえば、相手が行き詰った状態や、落ち込んだり、混乱したりしている場合の気分転換である。

具体的には、次のようなことを行なうのがブレイク・ステートである。

  • ユーモアをいう。
  • 相手との位置関係を変える。
  • 相手のいる位置を移動してもらう。
  • 場所を変える。
  • 飲み物や食事を一緒にとる。
  • 首や肩を回す。背伸びをする。
  • 深呼吸。
  • 立つ。座る。歩く。横になる。
  • 相手の好きな絵や写真を見せる。
  • 音楽をかける。音楽を変える。音楽を切る。
  • 相手に話させる。相手の興味のある話題を話す。
  • ペーシングあるいはこちらの動作を真似してもらう。
  • 雑談。
  • その他、社会的に了承され、相手のスタック状態から転換させるのに適切なら、どのような方法でもかまわない。



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