categories



  管理人 E-Mail:
info@rzt.sakura.ne.jp
アドレスは定期的に変更しています
元レンジャー隊員のブログ

天気のことわざいろいろ

「飛行機雲が現れると曇りか雨」

飛行機雲には、エンジンの排気ガス内の微粒子に水蒸気がついて雲になる 場合と、翼の端で気圧が下がり空気が冷えて雲になる場合の2種類がある。 いずれも天気が多湿の場合にできるので、カラッとした晴れは望めない。

「北東の風は天気が悪く冷たい雨が降る」

北方にある高気圧の影響で関東地方などに吹く冷たい北東風や、梅雨時 の三陸沿岸に吹くヤマセと呼ばれる冷湿の北東風は、いずれも冷たい雨 を降らせる。北東風が悪天候をもたらすという天気のことわざは、古く からギリシャや中国にもあった。

「星がまたたくと風が強くなる」

星がまたたくのは、密度の異なる空気が上空を横切るごとに地上に届く 光の強さや色が変化するためである。つまり、こういう日の上空では、 強い風が吹いているということだ。翌日になって太陽が昇ると地面が 暖められて上昇気流が発生し、上空の強い風が地上に降りてくる。

「流れ星多ければ日照り続く」

ヨーロッパで流れ星が多く見える年には、パリの冬は異常低温となって いる。日本でもたくさんの流れ星が見えた年の前年と翌年は干ばつが 多く、翌年は冬の気温が低くなる傾向にあるといわれている。

「冬の雷は雪起こし、春の雷は雪明け」

「雪起こし」は日本海側で冬にとどろく雷のことをいう。これは高さ6km もある積乱雲のしわざで、やがて大雪を降らすのでこの名がある。春の雷 は寒冷前線の通過とともに発生するので、その冬最後の大雪を降らせ、 やがて明るい春がやってくるという知らせである。

「小春日和が続く年は大雪。青山に雪が降ると次の冬は暖かい」

11月ごろの初冬の暖かい晴天のことを「小春日和」という。このような 日が続くと北極地方では寒気が蓄積されているわけで、この強い寒気は やがて真冬に日本付近に南下して大雪を降らせることになる。逆にまだ 山が青い秋のうちに寒気が南下して雪が降ってしまうと冬に寒気がなく なって暖冬になることが多いといわれている。

「クモの巣に夜露がかかると天気が良い」

クモの巣に夜露がかかるということは、これは湿度が高く夜間から未明 に気温が下がったことを示している。夜中に気温が下がるのは、風がなく、 空に雲がほとんどないないために起こる放射冷却によるものなので、 翌日はたいてい晴れる。真夏の晴れた朝には、草や屋根がびっしょりと 濡れていることがよくある。

「茶碗の飯粒がきれいにとれるときは雨」

高気圧が張り出して乾燥してくると、ご飯粒が乾いてくっつきやすくなる のでとれにくくなる。反対に低気圧が近づいて湿度が高くなると瀬戸物の 茶碗から離れやすく、きれいにとれるというわけである。

「煙が真上に昇ると天気が良く、横になびくと雨」

高気圧に覆われた晴れの空は、冷え込んで地面近くの空気は静かによど んでいる。このようなときは煙は真上に昇る。また、低気圧が近づいて 上空の風が強くなると、煙は横になびくようになる。

「太鼓の音色が変われば雨近し」
太鼓の皮は湿度に敏感で、湿度が高くなると濁った音になってしまう という。乾いた晴天には良い音だった太鼓も、低気圧が近づき湿度が 高くなると、鈍い音に変わってしまう。

「カエルが盛んに鳴くと雨」
このほかにも「トンビの高鳴きは風」「朝バト鳴くと雨、夕バト鳴くと晴れ」 「アリの引越しは雨」「カタツムリが木に登ると雨」など、動物の関係する 言い伝えは数多くある。

異常気象その2

太陽活動

太陽

地球環境の源は、太陽であるといえる。天気も地球環境の一部だから、 太陽活動がいつもと異なってくれば当然影響を受け、気象も明らかに異常 になる。たとえば太陽の黒点数は11年周期で増えたり減ったりしてい るが、増加しているときは太陽活動が活発化して地球の気温も上昇する。 ちなみに黒点数の推移を見ると、たとえば1990年はその前後の年に かけて黒点数の極大期だった。それから下降を続け、1996~1997 年ごろを最低に上昇期へと移行し、2001年とその前後の年に極大期 となって新たなサイクルに入っている。

火山噴火

火山噴火

大きな火山噴火があると、大量の火山灰や亜硫酸ガスなどが上空に舞い 上がり、これが地球全体を日傘のように覆ってしまうため太陽の熱が届 かなくなり、地球の温度を下げてしまう。これは「日傘効果」と呼ばれて いる。1991年6月に起きたフィリピンのピナツボ火山噴火の翌年、 1992年は北半球の気温が下がり異常気象が起こった。日本でも北日本 と西日本では、低温傾向と日照不足の不順な夏となった。これをうけ 1993年には我が国は米不足に陥り、米の緊急輸入に至っている。

雪氷面積

氷山

雪や氷は太陽光線を反射するため、地面は暖まらない。もし南極、北極 やシベリアなどの雪や氷の量(面積)が小さくなると、太陽光線の反射 が少なくなり気温が上がる。そして雪氷面積がさらに小さくなって、 地球的な規模で気候が変化すると考えられている。

温室効果

産業革命

空気中に二酸化炭素が増えすぎると、地球全体が大気ごと二酸化炭素の 層にくるまれたようになる。二酸化炭素の層は地表面から宇宙へ逃げて いこうとする赤外線を吸収するため、地球の放熱はさえぎられ、大気の 温度はしだいに上がっていく。二酸化炭素の層が温室のガラスの役割を はたすため、その中に閉じ込められてしまった地球の気温は上昇する ばかりとなる。これを「温室効果」という。

二酸化炭素の急激な増大は、自然に起こるものではない。人類は産業革命 以後、機械文明が発達し、世界中でばく大なエネルギーが消費されるよう になった。そして二酸化炭素の排出量が急増した。しかも二酸化炭素を 吸収する森林資源を大量に伐採してきている。

地球規模で気温が上昇すると、海水の膨張や氷河などの融解により海面 が上昇したり、気候メカニズムの変化により異常気象が頻発する恐れが あり、ひいては自然生態系や生活環境、農業などへの影響が懸念されて いる。

オゾン層の破壊

地球

上空約10~50kmにあるオゾン層は、成層圏にあって太陽の有害光線 である紫外線を吸収している。紫外線は地球の生物にとってある程度は 必要な光だが、一定以上増えると深刻な問題となる。オゾン層の減少 に伴い、強く紫外線が降り注ぐ地域では皮膚がんが増えたといわれて いる。オゾン層がなければ100パーセントの紫外線が地上に届き、 そのような環境では多くの生物は生きていくことができない。

異常気象その1

偏西風のもたらすもの

地球の大気は、ふつう中緯度の上空を西から東に流れている。この状態 では天気はほぼ周期的に変わり、異常気象は起こりにくい。しかし北極 地方の寒気が蓄積されて南北の温度差が大きくなってくると、低気圧が 発生する。すると、東西に流れる偏西風は南北に蛇行し、北からの寒気 と南からの暖気が大きく入り乱れる。

偏西風の蛇行がさらに大きくなると、低い緯度に低気圧性の冷たい渦が 偏西風から切り離されて南下し、これが大雨、大雪、雷をもたらす。一方、 高い緯度には高気圧性の暖かい渦が偏西風から切り離されて北上し、猛暑 と干ばつをもたらす。

これを「ブロッキング現象」と呼び、長く続くので、異常気象が起こる。 やがて冷たい渦も暖かい渦も弱まってくると、偏西風はもとの東西の流れ に戻り、ブロッキング現象も消えていく。

エルニーニョ現象

地球全体の天気は海が持っている熱や水分によって大きく左右され ている。

数年に一度、太平洋東部赤道付近(南米ペルー沖)の海水温が平年より 3~4度も異常に上昇することがある。これがエルニーニョ(神の子) 現象で、世界的に異常気象をもたらす。

エルニーニョ現象が起こると、太平洋の東部赤道海域で上昇気流が活発 になり、北太平洋高気圧が発達する。すると高気圧の縁にあたる日本付近 では冷夏や暖冬になり、世界的にも干ばつや大洪水という異常気象が起 こる。

エルニーニョ現象には貿易風が関係している。赤道付近の貿易風が弱いと、 暖かい海水が自然に東太平洋にながれてくるからである。反対に赤道付近 の貿易風が強いときには、暖かい海水は東南アジア方面に集まり、ペルー 沖には深海から冷水が上昇してくるため、海水温が異常に下がる。この エルニーニョ現象とは反対の現象は「ラニーニャ」と呼ばれている。

ラニーニャ現象が起こると、日本では夏はより暑く冬はより寒くなる傾向 にある。

ニーニョ + エル = エルニーニョ
Niño + El =  El Niño
(男の子) + (定冠詞) = (神の子、イエスキリストの意味)

ラ ニーニャ
La Nina
(女の子という意味)

動植物から天気を読む

昆虫や動物から天気を読む

虫たちは、気温や湿度など天気の変化に敏感だ。悪天が近づくと、交尾 のために騒ぐチョウや虫がいる。その虫を食べようとトンボやツバメが 低く飛ぶ。虫を捕まえるためにクモが大きな巣を張る。このように動物 たちの世界では低気圧が接近して雨が近づくと、大騒ぎとなる。

また、「ヒバリが高くあがると晴れ」ということわざがあるが、これは空気 の湿った日は音が早く伝わるので、ヒバリの飛んでいる位置を低く感じる ためであり、逆に晴れの日には、空気が乾いていて遅く伝わるので、より 高い空を飛んでいるように感じるためである。

  • 「池の鯉が水面上で跳びはねると明日は雨」
  • 「カニが水から出ると雨」
  • 「チョウが騒ぐと雨」
  • 「ブヨの餅つきは雨」
  • 「蚊柱が立つと雨」
  • 「ツバメが低く飛ぶと雨」
  • 「クモが大きい巣を張ると雨」
  • 「ヒバリが高くあがると晴れ」

植物から天気を読む

雨の前兆の風は温かく湿っている。湿度の高さと、雲が広がることに よる明るさの変化に植物たちも反応する。

  • 「樹木から汗が流れると雨」
  • 「稲の花が突然閉じると雨の前兆」
  • 「ネムの葉が閉じると雨」
  • 「ハコベが花を閉じると雨」
  • 「クローバーの葉が閉じると雨」
  • 「桜の花がうつむいていると雨」
  • 「ナスの葉が立てば晴天、しだれると雨」
  • 「ハギの花が横に向くとやがて雨」
  • 「日中までアサガオが咲いていると天気が悪化する」

夕方に天気を読む

夕焼けには空が焼ける場合と、雲が焼ける場合の2つがある。

高気圧に広く覆われて、全国的に晴天が続く場合に「空の夕焼け」がよく 見られる。また、太平洋側では冬の晴天が続くときに見られることが多い。

空が焼けるためには、西側の広い範囲に雲のない状態が必要となる。つま り西に悪天をもたらす雲がないので、「明日は晴れ」ということになる。 「西空焼ければ明日は晴れ」「夕焼けのあと空が青く澄めば晴れ」などの ことわざがこれにあたる。

雲が焼ける場合

(1)巻雲、巻層雲が焼ける場合は、太陽が沈むにつれて変化して いく色を見る。

黄色、オレンジ、赤、紫、銀鼠(銀色をおびたねずみ色)と変化するの は、晴天の昼間の積乱雲から生まれた巻雲の色の変化で、明日は晴れる。

黄色、オレンジ、赤、灰色、黒と変化するのは、低気圧や温暖前線が後ろ に控えている巻雲のそれだ。天気は下り坂だと考えられる。

(2)高積雲が焼ける場合は、日没時に全体がオレンジ色をしていた 雲が時間とともに赤みを増し、その後、急に灰色に変わって黒くなること が多い。天気のことわざの「夕焼けが消えるとき黒ければ雨」「夕焼けが黒 く変われば雨」などがこれにあたる。高積雲は雨の前後に現れるから、雨 上がりに出る場合を除いて高積雲が現れている場合は、雨になるのは15 時間後くらいなので、翌日は朝から雨ということになる。

(3)層積雲が焼ける場合は、雲の厚みがあるため夕焼けで雲全体が 赤く色づくことは少なく、輪郭部分だけのことが多い。層積雲は高い雲が ないときに夕焼け状態になる。先の悪天を知らせる高い雲がないため、 雨の前兆にはならない。陸上の上昇気流の衰えに伴って積雲が層積雲に 姿を変えたものが多い。

(4)積雲、積乱雲の場合は、その雲の下で局地的に雨が降る場合が 多い。雲自身の発達度合い、進行方向などで雨を知るのが一般的な方法 だ。台風接近の場合を除き、これらの夕焼けによって明日の天気を予知 することはできない。

台風が接近している場合は、積雲や積乱雲が数多く現れる。しかし、雲底 がお互いにくっついているため、地上から雲の形を見ることは難しい。 このときに夕焼けが起こると、西の空だけではなく全天がオレンジや真紅 に染まる。ことわざの「血の夕焼けは風雨」「夏の夕焼け、船つなげ」は 台風接近時の夕焼けを表している。夕焼けしているときからポツポツと 降りはじめていることもあるが、この場合は2~3時間後に雨が本格化 することが多い。

台風以外では、梅雨前線に南から暖かい湿った空気が入った場合も同様の 空模様となることがある。

昼間に天気を読む

巻雲

巻雲が時間とともに広がって巻層雲や高層雲に変わり、雲が厚くなって くる場合は、巻雲が出てから雨が降り出すまでは、12~24時間が 目安だ。
ただし、晴れが継続する巻雲もある。移動性高気圧の接近や、太平洋高 気圧に広く覆われるなど気候的に安定した時期に発生する巻雲もある。

巻積雲

巻積雲が出ているときは、上空の大気が不安定で、低気圧の接近を知ら せていることが多い。この雲は変化が早く、やがて巻層雲や高層雲へと 変わっていく。巻層雲などの「高層の空に現れる雲」へ変わる場合は、 変わったときから雨までの時間が16時間以上あるが。高層雲などの 「中層の空に現れる雲」へ変わった場合は、その時点から6~12時間 後には雨となる確率が高い。

巻層雲

昼間、太陽の周りに光の輪が出ているのを見ることがある。空に巻層雲 が広がっているために起こる現象だ。この光の輪を暈と呼ぶ。暈は完全 に丸い形になっていることもあれば、円の一部分だけが現れている場合 もある。

巻層雲が現れてから、この雲が厚くなる変化をする場合は、低気圧が 接近し、やがて雨になることを示している。台風などの急速な天気変化 の場合を除き、巻層雲に暈を観測して、雲が厚くなることにより暈が消失 してから雨になるまでには約20時間ある例が多い。

梅雨や秋雨などのぐずつき型の雨を除き、低気圧や前線が通過すること による雨の例では、その持続時間は4~5時間程度であることが多い。 この場合、暈が消えてから雨が上がるまでは、ほぼ24時間になる。 午前中の暈なら、だいたい翌日の午後には雨が上がり、早朝の暈なら翌日 の朝には雨が上がるという計算になる。「太陽が上がるときに暈があれば 翌日は晴れる」という天気のことわざもある。

もちろん、天気変化の速度によって時間的にかなりの開きがでるため、 その後の雲の変化を見て判断しなければならない。

高積雲

高積雲が出るのは、その高さで空気の上下運動が盛んになっている証拠 だ。この雲が出るのは低気圧や温暖前線の周辺で、高積雲の雲の下に積雲 や層積雲の雲片が出はじめたら雨の前兆であり、降っていた雨が小やみに なって、わずかな雲の切れ間から上空に高積雲が広がっているのが見え たら雨が上がる前兆だ。

レンズ雲

レンズ雲

レンズ雲を見たら、いま現在は地上の風がさほど強くなくても、上空では 強い風が吹いているしるしで、やがて強い地上風が吹く。強風に対する 備えが必要だ。天気は崩れて雨になることが多い。レンズ雲の形が崩れ、 高層雲に変わったら6時間ほどで雨になることが多い。

レンズ雲は見かけ上では同じ場所に浮かんでいるが、雲を構成している 雲粒は風上から風下へと移動し、常に入れ代わっている。雲そのものが 移動しないのは、地形の影響を受けてできたり消えたりする雲だからだ。

最もレンズ雲らしいのは高積雲-レンズ雲で、とくに山の山頂上空に発生 するものを一般的に笠雲と呼んでいる。また、巻積雲や層積雲にもレンズ 雲は発生する。

早朝の空を理解する

今日の天気を読む場合、まず日の出のころの空模様を観察しておく必要が ある。早朝の空は、それから先の天気を表わしている。そして昼間の 観察は、早朝の観察と比較してはじめて天気の変化やその速さを確認する ことができる。天候が気になるアウトドア活動では、日の出の空は必ず 確認しよう。

早朝には層積雲や層雲などの低い雲が現れることがよくある。その雲を 動かすのは地上付近の風だ。早朝の天気変化を理解するには、まず、 空気の流れを上空と地上付近とにわけて考える必要がある。

昼間、太陽エネルギーで暖められた陸地や海は、夜になると冷えて 日の出のころに最低気温が観測される。このとき陸と海で温度を比べ ると、海面のほうが温度が高い。海水は陸地に比べて冷えにくいためだ。 陸地に比べて暖かい海面上の空気は上昇し、陸上の冷たい空気を海の ほうへ引き寄せることになる。これが陸風である。

陸風は海が東にあるときは西風、海が西にあるときは東風、海が南に あるときは北風、海が北にあるときは南風になる。地上をはうように して流れる早朝の層雲や、低い空に現れる雲は、この陸風によって 流される。陸風とその上を流れる上空の風との方向の違いや、風の 強さの違いで雲の形も変わる。上空の風と陸風が交差するような場合 には、らせん状の回転気流が発生するので小さな積雲状の雲が並んで 見えることがある

上空が西風の場合の雲の動き

東に海がある場合

上空は西風、地上付近も西風のため、海上に発生している積雲は接近 してこないことが多い。太陽が雲に隠れるが心配ない。

西に海がある場合

上空は西風、地上付近は東風のため、海上の雲の上空部分は風に流さ れて陸上へ流れてくる。にわか雨の心配がある。

北に海がある場合

上空は西風、地上付近は南風のため、回転気流が発生し、海上に発生 した早朝の低い雲は北へ、雲頂は南東へ動く。上空の風が北寄りの場合 だと雲が来る。

南に海がある場合

上空は西風、地上付近は北風のため、回転気流が発生し、雲低は南に、 雲頂は北東へ動く。上空の風が南寄りだと雲が来る。

早朝の陸の上に出た入道雲

夏の陸上、とくに山岳地方では、日の出のころ積乱雲を見ることがある。 この積乱雲は、前日の夕方から夜にかけて雷雨を降らせるなどした雲の 残骸だ。この雲から降る雨は一時的なものだが、台風や低気圧が接近し 早朝から温度の高い南風が吹く場合には、陸上のあちこちに入道雲が 立つ。その日は積乱雲が発達して強い雨が降ることが多い。

トビは、この上昇気流の変化に敏感だ。天気のことわざに「朝トビ空中 に舞えば雨」「朝トビ傘持て」というものがあるが、これらのことわざは トビの活動を通してふだんの朝より上昇気流が強いことを知って、雨を 予知しているわけである。

高積雲が塔状になったら5時間後の雷雨に注意

朝トビが舞うような気象状況のときによく出る雲に、高積雲の「塔状雲」 がある。高積雲は、俗にひつじ雲と呼ばれているが、そのひつじ雲が 垂直方向に立ち上がっているように見える雲だ。この雲が出るときは、 その雲が出現している付近に寒気が流入してきているため、大気が 不安定になっていることを示している。

高積雲-塔状雲は午前9時ころまでに出現することが多く、その場合は、 雲が出現したのち約5時間して雷雨が襲来する可能性が大きい。 午前8時に出現した場合は、午後1時ころには雷雨になると予測する ことができる。登山などのアウトドアでは雲の現れ方によってスケ ジュールを修正するという心構えも必要だ。

塔状雲は、午後や夕方に出現する場合もある。その場合も雲が高積雲 であれば、やはり出現から5時間後に雷雨の可能性を考える必要がある。 午後の高積雲-塔状雲は、夕方から夜半にかけての雷雨を予告して いるので、河原でのキャンプは雨による増水を十分注意しなければ ならない。

雨を知らせる塔状雲

塔状雲(とうじょううん)とは、基本的な10種類の雲をさらに細かい ところまで見ていった場合の、雲の形のパターンのことである。ほかに も、毛状雲、かぎ状雲、レンズ雲などがある。

塔状雲は、巻雲、巻積雲、高積雲、層積雲の4種類の雲に現れる。 低気圧の前触れとして現れる場合も多く、上空に寒気が流入したために 盛んになった上昇気流がその出現の背景にある。巻雲はホタテの貝柱の ような外観を、巻積雲は空にうろこを並べたような外観を、高積雲は ひつじを立てて並べたような外観を、層積雲はシュークリームのような 上に膨らんだ外観をしている。いずれも垂直方向に発達しているのが 塔状雲の特徴である。

巻雲–塔状雲は20時間後に、巻積雲–塔状雲は10時間後に、 高積雲–塔状雲は5時間後に、層積雲–塔状雲は1時間以内に 雨になる可能性を考えておきたい。

早朝の雲から天気を読む

朝起きたら曇っているとき

朝曇っている場合は、空にどんな雲が出現しているかをまず確認しよう。 その雲の種類と現れ方から、その日の天気の予想ができる。

層雲(朝霧)の場合は?

晴れた朝、放射冷却によって気温が下がると放射霧が発生し、前日に 雨が降るなどして空気が湿っていると濃霧になりやすい。このタイプの 霧は、気温が上がるにしたがって消滅していくのでその日は晴れる。 放射冷却の霧を「晴れ霧」と呼ぶこともある。

川面にたつ朝霧(蒸発霧)や、太陽が見える明るい朝霧(放射霧)は 放射冷却現象によるものなので晴れになる。

一方、冷たい空気と暖かい空気がぶつかることによって発生する霧は、 天気の変わり目を知らせている。霧の上空に雲が広がっていたり、霧が 上昇して雲に変化したり、午前10時を過ぎても地上の霧が晴れないなど の場合は、午後から雨になる可能性が高い。

雨を予告する朝霧のことわざでは「朝霧があって曇天だと雨」「朝霧が地面 を離れて上昇し雲になると雨」「朝霧が深いのは雨」「朝霧が晴れないのは 雨の兆し」といわれている。

層積雲の場合は?

空を覆っている層積雲の雲の切れ間から、層積雲の雲頂の形状を確認 しよう。まず雲頂がムクムクと盛り上がった形の層積雲の場合、朝日が 当たると雲頂が光る。これは雨になる雲である。

層積雲の上部が平らな形状の場合、朝日が昇るとき雲の下は日が当たって 輝くが、雲の上部は灰色をしている。この層積雲の場合は雨にならない。

雲が厚く空を覆い、形状がわからないときは、外へ出て耳をすますと、 遠方の電車の音や高速道路を走る車の音が、ふだんよりも大きく聞こえる ことがある。このようなときは雨の前兆と考えてよい。天気のことわざの 「寺の鐘の音が近いと雨」はこの現象をいい表している。雲が海側から 移動しているときや、生暖かい風とともに南から移動してくる場合は、 雨の確立はさらに高まり、5~6時間後には雨になる。

一方、層積雲にはもうひとつ、単なる朝曇りでやがて晴れる状態のものが ある。晴れる場合の層積雲は、雲の厚みが時間とともに減り、雲のすき間 が広がってくることが多い。

高層雲の場合は?

昇ってくる太陽が、すりガラスを通して見るようにぼやけて見えるのは、 高層雲に覆われているときだ。時間とともに太陽が見えなくなって、雲の 色も灰色が強くなると、雲の層が厚くなっている。こうなると8~10時間 後には雨が降ると考えよう。

さらに、太陽がぼんやりと見えている半透明な高層雲の下に、黒いちぎれ 雲が現れる場合は、3~4時間後に雨。太陽が見えない不透明な高積雲の 下に、黒いちぎれ雲が現れる場合は、ちぎれ雲の下がすでに雨の場合も あり、雨はいつ降りだしてもおかしくない状態だと考えたい。

高積雲の場合は?

雲が空全体を覆っている場合と、空の一部に現れている場合とがある。 その後の天候変化を予測するには高積雲の形状を確認する。

薄い板状の形をした高積雲が空に広がっている場合、朝日が当たると朝焼 け色のタイルを空に敷き詰めたようにも見える。このような層の薄い高積 雲の場合は、雨になる可能性はあるものの、降るまでに10時間以上の 時間がある。

一方、雲のかたまりのひとつひとつに厚みがあり、積雲のようにコロコロ とした形をした高積雲-塔状雲は5時間後には雨になる可能性が大きい。 春から夏にかけて出現することが多くなる雲だ。このような雲は午前中、 それも午前9時ごろまでに現れることが多い。春は春雷、夏は夕立の前触 れとして現れる。

これら高積雲の雲低は、平らになっているのが特徴だ。このほか、雲低が 垂れ下がっていて、塔状雲を逆さまにしたような高積雲がある。このよう な雲低をもった雲を乳房雲という。この雲の下では、すでに雨が降りはじ めている。

巻層雲や巻積雲の場合は?

太陽が透けて見える層状の雲が広がっている場合は、高層雲のほかにも 巻層雲が原因となっていることがある。高層雲と決定的に違うのは、 巻層雲の場合は、太陽の周囲に光の輪ができるということだ。この光の輪を 「暈(かさ)」という。

太陽に暈が出ているときは、雨域までの距離が600km程度離れてはいる が、やがて雨になるサインだと考えたほうがよい。もしもそのままのペース で天気が悪化し、雲が厚くなることによって暈が消えると、その時点から 約20時間後には雨になる可能性が大きい。

朝の巻層雲による曇りは、夜半の雨を知らせていることになるので、テント を張るなどして野外で一夜を過ごそうとしている場合には、寝ているとき の雨対策をしておいたほうがよい。

昼間の天気としては、「曇り」で雨はまだ遠く、昼間の活動には支障をきた さないということだ。巻積雲が出ている場合は、やがて巻層雲に変化して いくことが多いので変化してからの時間で判断する。

朝、いつもより気温が高いときは天気が悪くなる

低気圧接近のときに吹く暖かく湿った南風が起こす現象

「朝、竹やぶへ露がたくさん落ちれば雨」という天気のことわざ がある。いままで気温が低い状態が続いていたところへ暖かい空気が 入ってくると、地面付近では湿度が上がり、植物の葉から出る水分や空気 中の水分が、竹の葉の上で露を結ぶ。このとき積雲系の雲がある場合は、 早ければ昼ごろに雨になるが、層雲系で高度の高い雲の場合は、夕方まで 降らないことが多い。

「ケヤキの幹から水が噴き出すと雨」は、木の生育が盛んな夏 の時期にいわれる天気のことわざである。もともと夏は気温が高いが、 低気圧が接近して南風が吹くとむし暑くなる。南に面した斜面では、 雷雨が発達したり豪雨になったりして、河川の増水や鉄砲水の恐れもでて くる。このとき、空には積雲系の雲が南から北へ移動するのを見ることが できる。

「水がめが汗をかくと雨」は春から秋にかけて広くいわれる天 気のことわざだが、とくに水がめの水温が低くなる春や秋に起こる現象を いっている。冷たい飲み物のコップの外側に水滴が付くのと同じ原理で、 台風からの南風が吹き込んで湿度が上がるときによく見られる。

「霜柱が折れると雨」という天気ことわざは、気温の異常な上 昇による現象である。通常はゆっくりと溶ける霜柱が、急に溶けて折れる ようにして倒れることをいう。低気圧の接近で暖かな南風が吹きはじめ ると、このような現象が起こる。このとき、空には高積雲や高層雲が見ら れることが多い。

日本の特異日を知る

特異日情報を知ってアウトドアに生かそう

一年間を通じて見られる「天気のクセ」というものがある。たとえば、 4月6日は寒の戻りが起きやすい、9月26日ごろは台風が上陸しやすい、 11月3日の「文化の日」は晴れやすい、などのように特定の日に「ある 気象状態」が高い確率で出現する現象であって、その出現が偶然とは 考えにくいものを「特異日」という。

アウトドアの活動計画を作るときに、この特異日に注意しよう。特異日は 長期間の実例の合計から求めた確率の高い現象だが、冷夏、暖冬、猛暑、 寒波などは年によって現れ方が違うし、地球の自然環境が大きく変化しな ければ、という前提の上での話しであるため、天気予報と調整しながら 利用していきたい。

悪天が現れやすい日

2月17日ごろ東京。雪が降りやすい。
2月22日瀬戸内海、九州。低気圧の接近で気温が上昇。
3月13日全国的。低気圧の通過。
4月3~4日関東以西。低気圧の通過、その後気温が下がる。
4月8日関東以西。
6月12日関東以西。前線の活性化。
6月25日~7月2日関東以西。前線の活性化。
8月31日瀬戸内海。低気圧の通過。
9月15日東北以南。
9月17日ごろ大型の台風が来やすい。
9月26日ごろ大型の台風が来やすい。
9月29日中国、四国、九州以外。低気圧の通過、その後気温が急 に下がる。
10月13日ごろ東北以南。
11月17日ごろ東北以南。
11月24~27日全国的。低気圧の通過。
12月26~29日全国的。低気圧の通過。気温の激変。

好天が現れやすい日

1月3日太平洋側。
1月6日太平洋側。
1月19日太平洋側。
3月31日~4月1日関東以西。
4月5日全国的。
5月13日全国的。
5月19日東北地方南部と北関東地方。
6月10日関東、中部。
8月10日関東、中部。
8月10日ごろ全国的。
8月12日関東、中部、近畿東部。
8月29日関東、中部、近畿東部。
10月10日全国的。
10月16日ごろ東北以南。
10月23日ごろ全国的。
11月3日全国的。
11月8日東北以南。
12月6日ごろ太平洋側。

気温の変化

1月15日ごろ寒波襲来、気温が下がる。
1月31日ごろ寒波襲来、気温が下がる。
2月14~15日北海道。14日に気温が上がり、15日に気温が 下がる。
3月14日ごろ東北以南。暖かくなる。
3月21日ごろ寒の戻りで気温が下がる。
4月6日寒の戻りの起こりやすい日。気温が下がる。
4月22~25日本州、四国、九州北部。前半気温が下がり、後半 気温が上がる。
8月8日ごろ関東以北。気温が下がる。
10月14~15日東北地方南部、関東、東海。14日に気温が 上がり、15日に気温が下がる。
11月11日ごろ全国的。気温が下がる。
12月24~25日寒波が来やすい。一般的にクリスマス寒波という。
12月26~29日九州、四国。寒波が緩み、低気圧の接近に伴い 気温が上がるが、その後急降下する。

太平洋側の大雪

めったに雪の降らない東京などの大都会では、たまに大雪(日本海側に 比べれば少ないが)が降ると都市機能はマヒに近い状態になる。 太平洋側の大雪は例年1~2度あるが、次のような条件のときに降り やすい。

第一の条件は、北の冷たい高気圧が日本付近にまで張り出すこと。これに よって日本の南岸沿いまで冷たい空気が流れてくる。

もう一つの条件は、東シナ海方面からやってくる発達した低気圧である。 北の冷たい高気圧から吹く北風と低気圧に向かって吹く暖かい南風が 太平洋側でぶつかって雪を降らせるわけである。

東海から関東、東北地方に大雪を降らせた低気圧が台風並の勢いで東海上 に去っていくと、そのあとは移動性高気圧が日本をおおう。太平洋側で 大雪が降った翌日がよく晴れるのはこのためで、そういう日は放射冷却で 冷え込み、前日の雪の日より寒くなったりする。路面凍結などで、大都市 では大雪の後遺症が幾日も続く。

放射冷却

この地球には、常に太陽からの熱エネルギーが蓄えられている。そのうち の一定量は宇宙空間に向かって放出されているが、太陽からのエネルギー の獲得と放出のバランスが地球の生命にとってちょうどよい環境を作って いる。

真冬の太平洋側では西高東低の気圧配置が長く続くため、冷たく乾燥した 雲一つない青空が広がる日が多い。そういう日は日中は暖かくても、夕方 になると冷え込んでくる。このような快晴で風もない夜は、日中にわずか ながら届いた暖かい太陽のエネルギーもどんどん宇宙空間に逃げていき、 明け方には厚い氷がはるほどまで冷え込む。これが放射冷却で、冬の太平 洋側では毎日のように起こっている。

曇っている場合は、雲が地表からの熱をはね返すために放射冷却は弱く なる。

雪崩

雪崩が起こるのは春先ばかりではない。日本海側の山では、西高東低の 強い冬型の気圧配置でたくさんの新雪が降ったときには、表層雪崩が 起きやすくなる。また、太平洋側の山で本州の南岸を低気圧が通って 湿雪が降ったときに要注意となる。

スキーで登れないくらいの斜面(約25度以上)に15cm以上の新雪が 積もったときは危険である。また露営する場合には、沢の本筋から遠い 場所を選ぶこと。表層雪崩の危険地帯に入るときや新雪の斜面を登る ときには、雪の締まっている夜間や日の出前に出発するするようにし、 ピッケルやストックで雪の状態をよく確かめて行動する。天気の悪化は 即、雪崩警報が出たものと考える。また、降雪日と翌日は斜面の上り 下りをやめたほうがいい。

冬山の雪崩は表層雪崩が大部分だといわれている。冬山で事故に遭わ ないために、天気の変化や積雪の状態には十分注意したい。

一方、春先に気温が上昇して起きるのは底雪崩である。きっかけは雨、 突風、雷などのほか、動物の動き、列車の振動、ジェット機の衝撃音、 工事の発破のわずかな空気振動などが原因となる。

冬から春にかけ、低気圧が日本海に現れて、気温が急に平年より大幅に 高くなると全層雪崩の危険が高くなる。雪の上を歩いているときにグッ というような低音が聞こえたり、雪面に割れ目があったり、足元が沈む ような感じがしたら早急に避難しなければならない。また、雪崩が自然 発生するのを見たり、形跡を発見したら、今自分がいる近くでも起こる 可能性があるものと考える。

冬型の気圧配置

毎年、年末に近くなると、発達した低気圧が日本付近を通過して大荒れの 天気になることが多い。低気圧から南西に伸びる寒冷前線は、勢いよく 吹き出してくるシベリアの冷たく乾いた空気に押されて、日本海に出て くる。日本海では海面温度と大陸から吹き出してきた空気の温度の差が 大きいため、海面からは湯気が立ちのぼり、それが雪雲に成長する。 前線も相対的に温度が高く湿った空気に出会うため発達する。

勢力を増しながら北東に進む低気圧のために、日本海側では暴風雪に 見舞われ、本州では主に寒冷前線の通過時に大荒れとなる。

寒冷前線が通過したあとは、日本は西高東低の典型的な冬型の気圧配置 となり、冷たい大陸からの空気におおわれる。冬型の気圧配置は日本に 北西の季節風を呼び、日本海側は大雪、太平洋側は晴天で乾燥という 特徴的な天気をもたらす。

同じ冬型の気圧配置でも、日本海側の山地で雪が降るときと、より海岸に 近い里で雪が降るときの2つのタイプがある。日本海の等圧線を見て、 縦じまなら山雪型、袋状に湾曲していれば里雪型である。里雪型の場合 には、日本海北部に低気圧があることが多い。

いずれにせよ大陸からやってくる空気は、暖かい日本海から水分をもらい、 この水分は日本海側で雪になって落ちる。山を越えた乾いた風は太平洋 側に冷たい空っ風を吹かせ、雲一つない晴天をもたらす。乾燥した強い 風が吹くときは火事になりやすい。冬場は特に注意が必要だ。

秋雨前線

夏が過ぎると、日本列島は再び長い雨期に入るとこがある。夏にがん ばっていた太平洋高気圧が南海上に退き、シベリア方面から冷たい 高気圧が日本海に南下すると、日本の南岸で前線が停滞する。これが 「秋雨前線(あきあめぜんせん)」である。夏の間に北のほうに押し上 げられていた梅雨前線が、太平洋高気圧の退場とともに再び日本南岸 に南下してきたのである。

日本ではほかに、3月に「菜種梅雨(なたねづゆ)」、5月に「卯の花 腐し(うのはなくたし)」、11月に「サザンカ梅雨」などというように 季節の変わり目によく長雨が降る。

これは高気圧が北にかたよって、本州付近に張り出したときにできる 前線の影響だが、こうした多雨に日本の米の文化、木の文化は支えられ ている。

雷に遭遇したら

雷雲の移動は時速10~20kmと、自転車並みのスピードである。上空 3000~4000mを流れる気流に乗って移動することが多い。

避雷法

まず屋内では、電気配線、柱や壁から1m以上離れること。 鉄筋コンクリートの建物や自動車の中でも、壁面から離れたほうが安全だ。

雷が近づいてくるにしたがって、AM波のラジオ電波に雑音が入るように なる。明瞭に雑音が入るようになったら、雷が約50kmに近づいている と考えたほうがよい。ゴロゴロという雷の音が聞こえてくるのは約10km の範囲だ。雷雲の大きさは約10kmであり、落雷の電流は水平に10km も走る場合もあるから、頭上に雷雲が来ていなくても落雷の危険がある。

雷雲の移動は時速10~20kmであるから、ラジオに雑音が入るように なってから、雷鳴音が聞こえるようになるまでには90分間ほどの余裕 がある。この間に避雷対策をしたい。

屋外で雷に遭遇した場合の避雷方法は、広い野原のような平坦な場所で 雷に遭った場合、できるだけ姿勢を低くしていること。傘や釣竿、ゴルフ クラブなどを体よりも高く突き出さないこと。よくいわれるように金属類 を体から外すというのは安全対策にならない。

傘や釣竿などが頭上にでていると、ただ立っているときよりも、さらに 危険度が増すから、直ちに地面に置くなどしなければならない。また、 ゴム長靴やレインコートは避雷の役には立たない。

屋外で不幸にして雷に遭遇してしまったら、まず姿勢を低くし、体より 高く物体を突き出さないようにしながら、落雷の合間をぬって安全な 場所に移動する。落雷と落雷の間には1分以上の間隔があるので、その 時間を避難に利用する。

ゴルフクラブ、金属バット、釣竿、傘などの長い金属物体は、手放すほう がよいが、やむをえず持つときは頭より低く持つこと。また体と平行に 持っていれば避雷ケーブルと同じ安全効果があって、万一、落雷を受けた ときに命が助かる可能性がある。

安全な場所とは、自動車、バス、列車などの中である。建物の中も安全 だが、アンテナケーブルからは1m以上離れること。二輪車からは2m 以上離れること。キャンプに使われるテントも、雷の電気を防ぐことは できない。テントから出て避難しなければならない。

安全な場所が遠い場合、周囲を見まわしてあいにく高いものがなければ、 その場でできるだけ姿勢を低くする。できれば窪地か4m以上の高さの 木などを探して避難すること。高さ4m以下の樹木には近づかないこと。

山の頂上付近や樹木がない岩場、稜線は非常に危険なので、できるだけ 早く遠ざかり、窪地に入って低い姿勢をとることが必要だ。

平地で安全な場所は、「5mの高さの木」の場合、幹から2m以上で木の てっぺんから45度の5m以内の範囲では、今までの調査によると、 直撃事故がなく、安全圏内だといわれる。ただし、幹だけでなく枝から も2m以上離れていなければならない。木は、雨宿りをするという理由で 安易に利用してはいけない。

また、送電線の下も直撃を避ける安全圏内が存在する。その範囲とは、 電線の下45度の範囲で電線に沿って安全なベルト地帯だとされる。

台風

熱帯の海で発生する低気圧は、世界中の海をかけめぐり、さまざまな 名前で恐れられている。そのうち日本を含めた北太平洋西部を襲うもの が台風(Typhoon)である。

台風は、巨大な空気の渦巻きだ。渦の中心には「目」と呼ばれる雲の ない場所があり、その周りを雲の壁が取り巻いている。壁の外側には 何本もの、らせん状の雲の帯が広がっている。

台風が近づくと台風独特の雲や雨の変化が現れる。今、台風が南西に あり、これから北東へ進み台風の中心が頭上を通過していくとするなら、 まず初めに現れるのが巻雲だ。東西に長い尾を引いたような形の巻雲が 南東から北西へ移動するのが見られ、下を積雲が同じ方向へ進む。やが て積雲の大きさが増し、大きい積雲の下では局地的な雨がぱらつく。 この雲が台風の中心付近から、らせん状に伸びている雲で、その一番 外側の1本目が通過していく。

らせん状の雲の通過が数回あって、巻雲は高層雲に変わる。一方、積雲 は「並み」から「雄大」に変わり、南風が強まって強いにわか雨も降る。 野外活動では避難態勢が必要だ。さらに台風が接近すると、台風本体の 雲がかかり乱層雲におおわれる。台風の中心から200~300kmでは 中心を取り巻く雨雲から強い雨が降る。台風の目に入ると突然、風雨が やんで青空が現れる。

日本では9月は本格的な台風シーズンで、17日と26日は大型台風 の襲来しやすい特異日(統計的にある気象状態が高い確立で現れる日) といわれている。

土用波

日本では雲一つない晴天でも、南の海上では大きな台風が渦巻いている ことがめずらしくない。その暴風雨は届かなくても、とても危ないもの が日本に届く。波のうねり、つまり土用波である。

大きな低気圧や台風には強い風が吹き込んでくるが、これが海上では 高さの割には波長の長いうねりを作る。長い周期のうねりは時速50 ~100キロのスピードで海上をはるばる北進し、それが夏の土用から お盆を迎えようという時期の日本に到着するわけである。

土用のころでなくとも南の海に台風のあるときは、晴天で風のない日で も海水浴には十分な注意が必要になる。

夏の土用とは、暦法では8月8日ごろの立秋の前18日間となっている ので、7月20日ごろが土用の入りにあたる。「梅雨明け10日」と言わ れる天気の安定する時期がちょうど暑さの盛りの土用にあたっている。




Copyright © 2005-2007 元レンジャー隊員のBLOG  All Rights Reserved.