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元レンジャー隊員のブログ

戦闘

いよいよ戦闘開始だ。
深夜の静寂を破って空砲と擬爆筒が響き渡る。
ドカーン!バンバンバンバン!ダダダダダダン!!
始まった。何とか任務を完了してすぐに脱出しなければいけない。
敵も撃ってくる。敵の上官がわめいている。
バンバン!バンバンバンバン!
敵兵が出てくる。めまぐるしい状況。次第に状況が把握できなくなる。
『みんなは大丈夫か?』
『今、この作戦はうまくいっているのか?これでいいのか?』
ただでさえ疲労や空腹や眠気で頭が働かない。
しかし状況がボーッとすることを許してくれない。
強制的に目を覚まさせようとする。
敵との交戦。鼓膜に響く大きな音。収拾のつきそうにない修羅場。
いろんな状況に出くわし、どうすればいいのか分からないことも多かった。
動きながら同時に先へ先へと考えていかなければならない。
考えて考えて考え抜かなければ、瞬間瞬間を乗り切れない。
だが非常事態がからだを反射的にシャキッとさせるが、苦痛が思考回路を弱らせる。
助教がよく言っていた。
「考える時は頭から血が出るほど考えろ!」
こんなセリフはレンジャーに来るまで聞いたことが無い。
人体の構造的に、どれだけ考えても頭から血は出てこないだろうが、要は何事でもとことんやり抜いてしまえということだ。
自分が今限界に達したということを、最後まで自分で知ることはできない。
その時は倒れた時だからだ。
自分で限界だと思うのは、限界寸前のところまでだ。
しかし自分がもう限界だと感じても、そこからが本当に長い。
極限状態・・・・・この状態のまま永遠とも思える長い時間を経験する。
自分が限界だと思ってもまだずっと先がある。
もう駄目だ、もうもたないと思っても終わるものではない。
『もうあと少し、これをやりきれば・・・』
毎瞬毎瞬思いながら10時間、20時間、30時間・・・
『もうあと少し、あそこまで行こう・・・』
数メートル歩く度に思いながら、10km、20km、30km・・・
思えばこんなふうに瞬間瞬間の過程をただひたすらつないでいった。
振り返ってみれば、こうやって限界をいくつも超えていくことができた。
「苦しい時こそレンジャーだぞ」
教官、助教がよくそう言った。
苦しい時こそ、逆境の時こそレンジャーとしての真価が問われているということだ。
「レンジャー」という言葉は特別な意味を持つ。そして力を持っている。
陸上自衛隊最高の栄光、究極のライセンスだと言われる。
限界に挑戦し、いかなる困難をも克服する選ばれた男だけが持つ証しだ。
だから苦しい時は『レンジャー』と言って歯を食いしばる。
「離脱!」「離脱ー!!」
戦闘隊長の号令だ。
任務が完了したら即離脱だ。
ダダダダダダン!ダダン!ダダダダッ!!
援護射撃をしながら戦闘隊は離脱経路へ。
敵兵が追って来る。
木々のあいだを抜けて走った。
背後にすごいプレッシャーを感じる。敵の助教が迫って来るからだ。
とにかく皆必死で走った。
追っ手がすぐそこに見える。
「手榴弾ー!!」
実際は投げないため敵に向かって叫びながら走った。
想定によっては離脱で何時間も走った。
離脱では常に敵に追われているという想定のため急ぐのだ。
そしてヘリ(訓練では車両)との合流地点まで、また長い行軍となる。


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