早朝の空を理解する
今日の天気を読む場合、まず日の出のころの空模様を観察しておく必要が ある。早朝の空は、それから先の天気を表わしている。そして昼間の 観察は、早朝の観察と比較してはじめて天気の変化やその速さを確認する ことができる。天候が気になるアウトドア活動では、日の出の空は必ず 確認しよう。
早朝には層積雲や層雲などの低い雲が現れることがよくある。その雲を 動かすのは地上付近の風だ。早朝の天気変化を理解するには、まず、 空気の流れを上空と地上付近とにわけて考える必要がある。
昼間、太陽エネルギーで暖められた陸地や海は、夜になると冷えて 日の出のころに最低気温が観測される。このとき陸と海で温度を比べ ると、海面のほうが温度が高い。海水は陸地に比べて冷えにくいためだ。 陸地に比べて暖かい海面上の空気は上昇し、陸上の冷たい空気を海の ほうへ引き寄せることになる。これが陸風である。
陸風は海が東にあるときは西風、海が西にあるときは東風、海が南に あるときは北風、海が北にあるときは南風になる。地上をはうように して流れる早朝の層雲や、低い空に現れる雲は、この陸風によって 流される。陸風とその上を流れる上空の風との方向の違いや、風の 強さの違いで雲の形も変わる。上空の風と陸風が交差するような場合 には、らせん状の回転気流が発生するので小さな積雲状の雲が並んで 見えることがある
上空が西風の場合の雲の動き
東に海がある場合
上空は西風、地上付近も西風のため、海上に発生している積雲は接近 してこないことが多い。太陽が雲に隠れるが心配ない。
西に海がある場合
上空は西風、地上付近は東風のため、海上の雲の上空部分は風に流さ れて陸上へ流れてくる。にわか雨の心配がある。
北に海がある場合
上空は西風、地上付近は南風のため、回転気流が発生し、海上に発生 した早朝の低い雲は北へ、雲頂は南東へ動く。上空の風が北寄りの場合 だと雲が来る。
南に海がある場合
上空は西風、地上付近は北風のため、回転気流が発生し、雲低は南に、 雲頂は北東へ動く。上空の風が南寄りだと雲が来る。
早朝の陸の上に出た入道雲
夏の陸上、とくに山岳地方では、日の出のころ積乱雲を見ることがある。 この積乱雲は、前日の夕方から夜にかけて雷雨を降らせるなどした雲の 残骸だ。この雲から降る雨は一時的なものだが、台風や低気圧が接近し 早朝から温度の高い南風が吹く場合には、陸上のあちこちに入道雲が 立つ。その日は積乱雲が発達して強い雨が降ることが多い。
トビは、この上昇気流の変化に敏感だ。天気のことわざに「朝トビ空中 に舞えば雨」「朝トビ傘持て」というものがあるが、これらのことわざは トビの活動を通してふだんの朝より上昇気流が強いことを知って、雨を 予知しているわけである。
高積雲が塔状になったら5時間後の雷雨に注意
朝トビが舞うような気象状況のときによく出る雲に、高積雲の「塔状雲」 がある。高積雲は、俗にひつじ雲と呼ばれているが、そのひつじ雲が 垂直方向に立ち上がっているように見える雲だ。この雲が出るときは、 その雲が出現している付近に寒気が流入してきているため、大気が 不安定になっていることを示している。
高積雲-塔状雲は午前9時ころまでに出現することが多く、その場合は、 雲が出現したのち約5時間して雷雨が襲来する可能性が大きい。 午前8時に出現した場合は、午後1時ころには雷雨になると予測する ことができる。登山などのアウトドアでは雲の現れ方によってスケ ジュールを修正するという心構えも必要だ。
塔状雲は、午後や夕方に出現する場合もある。その場合も雲が高積雲 であれば、やはり出現から5時間後に雷雨の可能性を考える必要がある。 午後の高積雲-塔状雲は、夕方から夜半にかけての雷雨を予告して いるので、河原でのキャンプは雨による増水を十分注意しなければ ならない。
雨を知らせる塔状雲
塔状雲(とうじょううん)とは、基本的な10種類の雲をさらに細かい ところまで見ていった場合の、雲の形のパターンのことである。ほかに も、毛状雲、かぎ状雲、レンズ雲などがある。
塔状雲は、巻雲、巻積雲、高積雲、層積雲の4種類の雲に現れる。 低気圧の前触れとして現れる場合も多く、上空に寒気が流入したために 盛んになった上昇気流がその出現の背景にある。巻雲はホタテの貝柱の ような外観を、巻積雲は空にうろこを並べたような外観を、高積雲は ひつじを立てて並べたような外観を、層積雲はシュークリームのような 上に膨らんだ外観をしている。いずれも垂直方向に発達しているのが 塔状雲の特徴である。
巻雲–塔状雲は20時間後に、巻積雲–塔状雲は10時間後に、 高積雲–塔状雲は5時間後に、層積雲–塔状雲は1時間以内に 雨になる可能性を考えておきたい。