コーチングとは、ある人間の可能性を信じ、自己実現をサポートするためのコミュニケーション技術である。
サポートをしていくためのコミュニケーション技術というのは、コーチが何か自分の思ったことをプレイヤーに教えるのではなくて、プレイヤー自身が自己の内部において気づきを得て、自ら答えを出し、選択肢を広げ、成果を手に入れていくということを支援する技術である。
コーチングのプロセスとは?
コーチングの手順は、次の4つの段階(GROWモデルという)に分けることができる。
(1)目標設定 Goal
本人がどうしたいか。目指すところを見い出させ、目標設定を助ける。
(2)現状認識 Reality
現状を認識させる。自分がいるところ、状態を気づかせる。良いか悪いかではない。
(3)選択肢・資源・方法 Options
どのような選択肢や方法があるかを見い出させる。すでに本人が持っている目標達成のために役立つもの(資源)を引き出す。
(4)意志確認 Will
できるできないではなくて、やるかやらないかの確認。コミットメント、約束。
コーチングのコミュニケーションとは?
コーチングは、次の3つのコミュニケーション技術によって進行する。
(1)リスニングの技術 Listening
聴き方のスキル。
(2)アスキングの技術 Asking
質問の仕方のスキル。
(3)フィードバックの技術
伝え方のスキル。
コーチングのプロセスは、相手とのコミュニケーションによって進められるため、コーチングにはベースとなるコミュニケーション技術が必要である。コミュニケーションの基本技術なしにはコーチングは成り立たない。
コーチングを支えるパラダイム
コーチングの技術を理解するためには、人間の「パラダイム」を理解する必要がある。
パラダイムとは、「その人の本質的な部分を覆い隠すように、ものの見方、感じ方、考え方、行動を無意識に規定している概念の枠組み」のことをいう。この枠組みが大きくなればなるほど選択肢が増え、つまり可能なものの領域が増大していくという理論である。
パラダイムはその人の行動を規定してしまうものとはいえ、必要なものである。パラダイムはものごとを「当たり前」にできるようにする。ただ、その枠組みが小さければ選択肢も限られて、枠組みが大きければ選択肢も増えるというわけである。
パラダイムの内側はその人にとって安全で、正しく、理解ができる領域であり、外側は危険で、間違っていて、理解できない領域であり、その境界を超えることは挑戦となる。
現状を認識するということは、自分のパラダイムに気づくこと。目標を設定するということは、このパラダイムの外に目を向けることである。そして、目標を達成する過程ではパラダイムの外に出なければならないし、枠組み自体を広げる努力をしなければならない。
人が何か新しい成果を望むなら、パラダイムという安全領域、すなわち過去の思考・感情・行動パターンから飛び出す必要がある。しかし、通常、人間は何か大きな失敗や問題でもなければ、自分を見つめたり考え方や行動を変えたりするようなことはない。
それまで自分を守ってきたはずのパラダイムが反面、束縛もしていたのだと知る瞬間、すなわち「もううんざり」「もうこりごり」するほどの状況に直面して、ようやく何とかしようと動き出す。そこまでいかないうちは、頭であれこれ考えるだけで、なかなか行動には踏み切らないものである。
しかし、自分の手に入れたいもの、なりたい姿が未知の領域であるパラダイムの外にあると認めるのなら、これまでの自分をありのままに直視し、思考・感情・行動を修正しなければならない。
このパラダイムを自ら突破し拡大する(ブレークスルーという)ためのサポートの技術がコーチングであり、その技法を支えているのが次の4つである。
(1)人は誰でもたくさんの可能性を持っている
(2)必要とする答えはその人の中にある
(3)気づきが重要
(4)気づきを得るにはパートナーが有効
コーチングは、これらの立場に立ってプレーヤーをサポートし、ブレークスルーを誘発し、パラダイムシフトによる目標達成のための技法である。