コミュニケーションの極意
卓越したコミュニケーションを身につけるためには、次の3つのことを行なうことである。これはコミュニケーションにおける場合だけでなく、ものごとを成し遂げるための極意である。
1.意図
2.鋭敏さ
3.柔軟性
1.具体的・明確な意図を持つ
意図とは「目的と目標」のことをいう。つまり、常に具体的・明確な目的と目標を持っていること。そして、目的や目標に適っていることをしていること。
コミュニケーションにおいても、何のためにしているのか? 何が得たいのか? どんな成果を望んでいるのか? ということを自分の中ではっきりさせること。
たとえば、ある上司が落ち込んでいる部下と話をするときに、「まずは彼の自信を回復することが先決だ」と意図を明確にしたのなら、話の途中で自分の仕事上の諸問題を思い出しても、彼とあらゆる面で価値観があわなくても、言いたいことがうまく言えなくても、最初に見い出した意図が羅針盤となって方向を指し示し、目的を果たすのである。
2.いま、ここにおいて鋭敏であること
鋭敏さとは「気づく」ということである。では何に気づくことが重要なのか。それは、
(1)意図に対して、いまどういう状態か?
(2)効果があるのか? Effective
(3)役に立つのか? Useful
という質問から導き出されるものである。これらの質問を自分に問いかけることによって鋭敏さが養われていく。
たとえば、先の上司の例でいうと「いま自分のしていることは、部下の自信を回復させるのに役立っているだろうか」「いま話している内容は自信を引き出すことに効果的だろうか。話し方は? 部下の状態は?」というように観察することである。もし自分が少し感情的になっているなら、「この感情は、いま役に立つのか?」と観察していくわけである。
3.柔軟であること
柔軟性とは、次の3つを自分でコントロールできる能力のことをいう。
(1)思考(ものの見方、考え方など)
(2)感情(気持ちや感じ方など)
(3)行動(言動、態度、姿勢、行動など)
コントロールとは、
(1)スタート(始める)
(2)ストップ(やめる)
(3)チェンジ(変える)
の3つのことをいう。
たとえば、先の例でいうと「結論を先に言うことは彼には効果的ではないようだ。これは私のクセだった。ならば物語風に話してみよう」とか、「感情的になって思わず声が大きくなった。私の強調したいことはそのことではないのに。この感情はいまは役に立たないのだ。よし、深くゆっくりと呼吸しよう」あるいは、「私の過去の失敗を話したら彼が生きいきとしてきた。私の痛い失敗談がいま役立っているわけだ。部下にこのように話をするのは初めてで変な感じだが、それが有効らしい。話を続けよう」というように対応することをいう。
このように、意図、鋭敏さ、柔軟性の3つのサイクルを回していくことが、成果を出すための極意である。