レンジャーとは?
陸上自衛隊レンジャー RANGER概要
陸上自衛隊のレンジャーは、昭和30年、陸上自衛官の幹部2名による米軍RANGER課程入校にその起源がある。
翌年の昭和31年10月、富士学校において陸上自衛隊レンジャー訓練が開始され、ここでレンジャー課程を修得した幹部・陸曹が基幹要員となり、全国の部隊レンジャー訓練も始められ、引き継がれていくことになる。
レンジャー訓練は陸上自衛隊普通科連隊のレンジャー要員として、主に挺進行動により困難な状況を克服して任務を遂行するための不屈の精神力と、知識及び技能を修得させる訓練である。
レンジャーは主力から独立して行動する少数精鋭で編成された戦闘隊であり、そのレンジャー隊員はレンジャーとしての知識や技能はもとより、厳正な規律、強靭な体力、即時即応の機敏な判断力と行動力などが要求される。
このため、訓練で実施する内容は陸上自衛隊において最も苛酷なものとされ、約2ヵ月半にわたって気力体力の限界に挑戦し不撓不屈の精神力を養い、いかなる困難をも克服して任務を完遂する能力を養成する。
レンジャー養成訓練
レンジャー訓練は、大きく分けて基礎訓練と行動訓練の2つに分けられる。
1.基礎訓練
主としてレンジャーに必要な体力・気力を練成するとともに、行動訓練に必要な基礎的技術に関する知識・技能を修得することを目的とする。
2.行動訓練
レンジャー訓練の主体をなすものであり、各種教育における潜入・襲撃・伏撃・離脱等の要領を体得するとともに、強靭な体力及び不屈の気力を練成することを目的とする。
基礎訓練
- 体力調整その1
- 腕立て伏せ・起き上がり・胴回し・かがみ跳躍・懸垂・綱の登降・持久走など体力向上運動。
- コンパスコース
- コンパスと歩測による目的地到達。
- 水路潜入
- ボートの取り扱い、水路からの潜入訓練。
- 格闘
- 徒手格闘術、敵兵の隠密処理法。
- ロープ訓練(レンジャー塔)
- セーラー/モンキー/逆水平ホール/スタンドホール/ななめセーラー/フットロック/座席懸垂/応用懸垂/戦闘降下/確保/リペリング/バランス/チムニー/プルージック登降/背負搬送などレンジャー塔で実施。
- 体力調整その2
- 体力調整の種目を小銃を携帯して実施。
- 障害走(軽装)
- 障害走コースを軽装で実施。
- リペリング
- ヘリからの降下訓練。空路潜入要領。
- 実爆
- TNTなどの爆薬を用いた、爆破技術。
- 地図判読
- 地図の見方やコンパスを使った応用技術。仕上げでは夜中に目隠しされたトラックで全く知らない場所に降ろされる。
- 10km武装走歩
- 控え銃で10kmの間を途中歩きも入れて走破。
- 生存自活
- 主にニワトリとヘビの捌き方や、携行食なしに生存自活する訓練。
- 障害武装走歩
- 障害走コースを小銃を携帯して実施。
- 20km武装走歩
- 控え銃で20kmの間を途中歩きも入れて走破。
- 岩場訓練
- フリークライミングや座席で有名な岩場にて本格的に実施。難所を進む。バランス/よじ登り/トラバース/落下/座席/戦闘降下/ロープ橋など、レンジャー塔で訓練した課目が岩場の地形を利用して繰り返し練成される。
- 重量物運搬
- 70kgの荷物を背負って登山。重すぎてわけが分からなくなる下半身。
- 10マイル武装走
- 16kmを控え銃で走り抜くハイポート。(1mileは約1.6km)
- 0想定
- 想定訓練にむけて実施。基礎訓練を踏まえて、よりレンジャーとしての任務、目的にそった訓練に突入。
行動訓練
山岳地帯の厳しい自然環境の中、広範囲に及ぶ訓練地域にて想定訓練(1~9想定)が実施される。
レンジャーとしての数々の任務を遂行するための訓練を、敵や戦況などを想定して行なう。
フル装備で30~40kg、想定によってはさらにプラス10~20kgの装備で、あらゆる困難を克服し広範囲に渡って活動する。
携行していく食糧はバディ(相棒と2人)で缶メシ1個が1日分だ。だがそれさえも食べれる保障はない。非常に飢えに苦しむことになる。
また、水も水筒に入れて携行するがめったに飲めない。たとえ全部飲んだとしてもとても足りる量ではない。そして喉の渇きは空腹よりもつらい。飲みたい衝動に駆られてしまう。精神状態も尋常ではなくなる。さらに睡魔もつらい。不眠不休に近いあらゆる困難を想定した訓練が続く。
このように気力体力の限界の中、困難を克服し任務を完遂するために各種課目における潜入・襲撃・伏撃・離脱等の要領を体得し、強靭な体力及び不屈の気力を練成することが想定訓練の目的であり、レンジャー隊員としての主体をなす訓練である。
- 想定訓練
- 非常呼集/命令下達/行動計画/隊容検査/潜入(山岳・水路・空路)/偵察/パルチ接触/襲撃/伏撃/爆破/生存自活/要人救出/離脱/長距離離脱
レンジャー徽章
全てのレンジャー課程を修了したものは、その証しとしてレンジャーバッジが授与される。
レンジャーバッジは中央にダイヤモンドが描かれ、周囲を勝利者の証しである月桂冠で飾られている。ダイヤモンドは最高の光を放つ宝石だが、象徴される意味はその輝かしさということだけではない。実に深い意味が込められている。
ダイヤモンドは万物の中で最も硬い石であることから、不撓不屈の意思の固さを象徴する意味で描かれている。
ダイヤモンドは原石のままでは光らない。ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない。したがって常に自分を磨き続けていくこと、そしてどのようにすれば自分を磨き自他ともに成長していけるのかということを、手にした隊員にはっきりと自覚させるのである。
これで終わりではない、このバッジに恥じないように生きろ!と。