プロソーシャルな道徳的判断の発達
アイゼンバーグ(Eisenberg, N. 1982)は、愛他性とか思いやりに関連するプロソーシャルな道徳的判断の発達には、6つの段階(レベル)があると述べている。
レベルⅠ; 「快楽主義的・実際的」志向
道徳的な配慮よりむしろ利己的、実際的な結果に関心をもっている。「善い」行動とは、行為者自身の欲求や要求を満たすのに役立つ行動である。他者を助けるあるいは助けない理由は、自己への直接的な利益、将来の互恵性および好きな人あるいは必要な人への気づかいといった考慮である。
レベルⅡ; 「他者の要求」志向
たとえ他者の要求が自分の要求と相容れなくても、他者の身体的、物質的、心理的要求に関心をよせる。この関心は、役割取得とか同情の言語的表明、罪悪感のような内面化された感情への言及といった明瞭なものではなく、ごく単純なことばで表現される。
レベルⅢ; 「承認および対人的」志向ならびに「紋切り型」志向
善い人・悪い人あるいは善い行動・悪い行動の紋切り型のイメージ、他者の承認や受容といった考慮が、プロソーシャルに行動するかしないかということの理由に用いられる。
レベルⅣa; 「共感的」志向
判断は、同情的な応答、役割取得、他者の人間性への気づかいといったものを含んでいる。あるいはまた、行為の結果に関連した罪悪感とかポジティブな感情を含んでいる。
レベルⅣb; 移行段階
助けるあるいは助けないの理由の根拠は、内在化された価値、基準、義務および責任性を含んだものであり、他者の権利や尊厳を守ることの必要性に言及する。しかし、これらは明確には述べられない。
レベルⅤ; 強く内在化された段階
助けるあるいは助けないの理由は、内在化された価値、基準や責任感に基づいており、個人と社会の契約上の義務を維持しようとする願望およびすべての人の尊厳、権利、平等についての信念に基づいている。自分自身の価値や受容した基準に従って生きることによる自尊心の維持に関連したポジティブあるいはネガティブな感情も、この段階を特徴づけている。