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よく認める認知の歪み


  認知とは知ることの活動である。すなわち、知識を獲得し、
  組織だて、そしてそれを利用することである。
  それは有機体の活動であり、とりわけ、人の行う活動である。
                  ナイサー「認知の構図」


認知療法の創始者の1人といわれるエリス(A.Ellis)と彼の共同研究者のハーバー(R.A.Harper)は、

「不安や憎しみから開放され平静に生活していくうえで障害となるのは、非合理的な考え方や非論理的な観念に捕われているからである」(エリスとハーバー,1981)

と述べている。私たちの生活に支障がでるような不安は、私たちの心の中の非合理的で非論理的な考えや観念から生まれるというのだ。

フリーマンら(1993)は、よく認められる「認知の歪み」として以下のようにまとめている。

よく認める認知の歪み (Freeman et al,1993)

二分割思考 (dichotomous thinking)

互いに相反する極端なふた通りの見方で物事を判断し、中間の灰色部分がない。
(例)失敗をしたら成功できないと考え、完全な出来でなければ全くの失敗とみなす。

過度の一般化 (overgeneralization)

ある特定の出来事を、多くの出来事の単なる1つとしてみないで、一般的な特徴としてみなす。
(例)妻がたまたま思いやりに欠ける反応を示したからといって、他の事柄を考慮しないで、もう妻には愛情がないのだと結論してしまう。

選択的抽出 (selective abstraction)

複雑な状況の、ある特定の側面だけに注意を注いでしまい、他の側面を無視する。
(例)仕事の評価を受けた時、ある1つの否定的な評価に焦点を当て、他の多くの肯定的な評価を見逃してしまう。

肯定的な側面の否定 (disqualifying the positive)

肯定的な経験を「大したことではない」などといって否定する。
(例)友人や同僚から肯定的な反応を得たとしても「皆は親切からそういっているだけだ」と考える。

読心 (mind reading)

証拠もないのに他人が否定的な反応をしていると思ってしまう。
(例)他の人々は礼儀正しくふるまっているのに、「あの人は私のことを間抜けだと思っていたのを私はよく承知している」などと考える。

占い (fortune-telling)

将来の出来事に対する否定的な予測を、まるで確立された事実のようにとらえて反応する。
(例)「あの人はきっと私を見捨てるのだ」などと考えて、それが絶対の真実のようにふるまう。

破局視 (catastrophizing)

将来生ずる可能性のある否定的な出来事を、事実関係を正しく判断して捉えるのではなく、耐えることができない破局とみなす。
(例)気を失うのは不愉快で気まずいことかもしれないが、必ずしも危険なことではないとは思わずに、「一体、気を失ったらどうしよう」などと考える。

縮小視 (minimization)

肯定的な特徴や経験が、実際に起きたことは承知しているのに、取るに足らないものと考える。
(例)「たしかに仕事はうまくいっている。だがそれがどうしたっていうのだ。家族も私のことなど構ってくれないではないか」などと考える。

情緒的理由づけ (emotional reasoning)

感情的な反応が必ず実際の状況を反映していると考える。
(例)絶望感を覚えているからといって、状況もまったく希望のないものであると決めてしまう。

「~すべき」という言い方 (”should” statements)

「~すべきである」「~しなければならない」という言い方が、動機や行動を支配している。
(例)「私はイライラしてはいけなかった。自分の母親なのだから、私が母の言うことを聞かなければならない」と考える。

レッテル貼り (labeling)

ある特定の出来事や行為に言及するのではなく、大袈裟なレッテルを貼ってしまう。
(例)「ちょっとした失敗をしてしまった」と考えるのではなく「まったくの失敗者だ」と考える。

自己関連づけ (personalization)

他の数々の要因が関連しているのに、自分こそがある特定の出来事の原因だと考える。
(例)上司が自分に対して無愛想だったような場合、それが実際には家族の誰かが亡くなったために動揺していたのに、上司が自分のことを快く思っていないことの表れだと考えてしまう。


このような非合理的な考え方や非論理的な観念に気づき、それらをもっている自己を素直に受け入れることによって、より「知性的かつ論理的な生活に近づくことができる」とされる。

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