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対人認知

われわれは、他人と接するときに、相手がどのような人物であるかについていろいろな手がかりを用いて推測し判断している。

推測判断の手がかりになるものに、まず外見的な特徴がある。身長や体格、髪型、顔つきや表情といった身体的な特徴のほかに、そのときの服装や持ち物、装飾品なども手がかりになる。さらに、対面的に相手とコミュニケーションが始まると、行動的な特徴や個人的な情報も加わる。例えば、声や話し方、話の内容、しぐさや態度などの特徴、さらに職業や家族構成、出身地といった個人的な属性に関する情報などが大きな判断材料になる。また、これらの情報は、直接相手と対面する以前に与えられることもあり、その時点でその人物についてかなり明確な印象が形成されることもある。

いずれにせよ、最終的にはそれらの情報をもとに、やさしそうな人だとか頭がよさそうだとか、親しみやすいなどといった全般的な印象として結論づけられることが多く、性格やパーソナリティはもとより、相手の意図や欲求、心理的な態度、感情の状態、能力といったその人固有の内面的な特徴について総合的に推論をしているといえる。他者に対するこのような一連の推測判断の課程は、対人認知(Person perception)と呼ばれる。

人と人とのコミュニケーションは、大きく言語的コミュニケーション(verbal communication)非言語的コミュニケーション(nonverbal communication)とに分けることができる。前者では送り手の意図が明確に示され、受け手もそれを意識することが可能である。一方、後者は、前者の補完的な意味合いを含むこともあり、言語的メッセージが使用不可能な場合の代替機能を果たすこともある。また、言語では表現しきれない意味や微妙な心情を伝える場合や、相手を拒絶したり回避する場合に非言語的な機能が使われることが多い。

ノンバーバル行動のリスト -- カウンセリング場面(菅野, 1982)

1.時間的行動
  • (1) 面接の予約時間(遅れてくる/早く来すぎる)
  • (2) 面接の打ち切り時間(打ち切りたがらない/早く打ち切りたがる)
  • (3) 肝心の話題に入るまでの時間
  • (4) 話の総量・グループ面接の場合は話の独占量
  • (5) 問いかけに対する反応時間(沈黙/など)
2.空間的行動
  • (1) 面接者や他のメンバーとの距離
  • (2) 座る位置
  • (3) カバンなど、物を置く位置
3.身体的行動
  • (1) 視線・アイコンタクト(凝視/視線をそらす/など)
  • (2) 目の表情(見開く/涙ぐむ/など)
  • (3) 皮膚(顔面蒼白/発汗/赤面/鳥肌/など)
  • (4) 姿勢(頬づえをつく/肩が上がったままこわばる/うつむく/身をのり出す/腕を組む/足を組む/半身にそらす/など)
  • (5) 表情(無表情/顔をしかめる/微笑む/笑う/唇をかむ/泣く/など)
  • (6) 身振り(手まねで説明する/握りこぶし/肩をすくめる/など)
  • (7) 自己接触行動(爪をかむ/体を掻く/髪をいじる/鼻を触る/口を触る/指を組み合わせる/など)
  • (8) 反復行動(貧乏揺すり/体を揺する/手による反復行動/ボタン・服・ハンカチなどをもてあそぶ/鼻をかむ/など)
  • (9) 意図的動作(指さす/同意のうなづき/否定の頭ふり/メモをとる/など)
  • (10) 接触(注意をうながすために相手に触る/握手する/など)
4.外観
  • (1) 体型
  • (2) 服装(派手/地味/慎み深い/きちんとした着こなし/だらしない着こなし/アンバランスな着こなし/など)
  • (3) 髪型(よく変わる/変わらない/手入れが行き届いている/手入れが行き届いてない/など)
  • (4) 化粧(有・無/濃い/薄い/若作り/セクシー/など)
  • (5) 履物
  • (6) 携行品
5.音声
  • (1) 語調(明瞭/不明瞭・口ごもる/声をひそめる/よわよわしい/高揚がない/子供っぽい/叱る/など)
  • (2) 音調(ハスキー/かん高い/低い/など)
  • (3) 話し方の速さ
  • (4) 声の大きさ
  • (5) 言葉づかい(正確/不正確/かたい/やわらかい/ていねい/ぞんざい/言葉づかいの一貫性/など)
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