オペラント行動強化スケジュール
オペラント行動と強化のされ方との関係を、強化スケジュール(schedule of reinforcement)という。強化スケジュールは、いくつかの種類に分類される。
1.連続強化(continuous reinforcement)
これは、自動販売機の物を買うように、行動が起きる度に強化される場合である。
2.部分強化(partial reinforcement)
連続強化以外の強化の仕方のことを部分強化、または、間欠強化(intermittent reinforcement)という。
部分強化で強化された行動の方が、連続強化で強化された行動よりも、強化された行動が消去されても長く持続することが実験によって明らかになっている。部分強化スケジュールにはいくつかのタイプがある。
(1)反応の回数が強化に関係するスケジュール
1)定率(fixed ratio:FR)強化スケジュール
これは、決まった反応数に対して強化する方法である。たとえば、定率強化5のスケジュールとは、5回反応する度に、強化する仕方である。
セールスマンが販売品を決まった数売るごとに、特別手当をもらったり、ごほうびに温泉旅行や海外旅行に行かせてもらう場合がこれにあたる。
この方法は、他の部分強化スケジュールよりも、短時間でオペラント行動の反応数を増やすことができる。
歯科治療に極端な恐怖心をもっている子どもに対して、たとえば3回来院するごとに特別なごほうびとして、その子どもが好きなアニメの主人公の絵のカードをあげるのは、定率強化スケジュールの例である。もちろん、毎回来院する度にほめてあげたり、手帳にシールを貼ってあげたりして、「来院する」というオペラント行動を連続強化することは基本的に重要な対応になる。
2)変率(variable ratio:VR)強化スケジュール
これは、強化が決まった反応回数ごとにされるのではなく、不規則になされる方法である。たとえば、変率強化10というのは、全体を平均して10回目の反応に強化をする仕方をいう。したがって、ある場合は、7回目に強化されるが、別な時は12回目に強化されることもある。
上で述べた歯科治療の子どもの例でいうと、何回目ごとの来院時にアニメの主人公のカードをあげるか厳密にしないで、おおよそ3回目あるいは4回目、5回目の時にあげ、全体として平均4回目の来院時にあげるようにする仕方は、これにあたる。
(2)反応した後の時間が強化に関係するスケジュール
1)定時(fixed interval:FI)強化スケジュール
これは、前の強化から一定の決まった期間が過ぎた後の最初のオペラント行動を強化する方法である。たとえば、定時強化3分というのは、前の強化から3分経った後の最初の行動を強化するスケジュールを意味する。
歯科治療に通っている子どもに、前の治療から2週間以降に来院するごとにアニメの主人公のカードをあげるのは、この方法になる。サラリーマンの月給制や週給制は、このような強化のされ方に近い。
2)不定時(variable interval:VI)強化スケジュール
定時強化スケジュールと同じように前の強化からある時間が過ぎた最初の行動を強化する方法ではあるが、その時間を一定させない仕方である。たとえば、不定時強化6分というのは、前の強化から、平均して6分経った最初の行動を強化するスケジュールをいう。ある時は4分経ってから、別の時は9分経ってからの場合もあるが、全体としては、平均6分後に強化される。
釣りや、ギャンブル、または宝くじなどの「当たり」がこれに近い。正の強化刺激が強化される時間や期間が一定していない場合は、この強化スケジュールによる強化の仕方になる。
(3)強化の効果を高める方法
1)強化はすばやく与える
適切なオペラント行動が見られた時には、その直後に強化刺激を与えた方が、しばらく経ってから与えるよりも、強化の効果が大きいということである。時間が経ちすぎた強化刺激は、強化の効果を生まない。
2)2次的な強化刺激をうまく使う
強化刺激には正と負という区別以外に、もう一つの分類の仕方がある。それは、無条件強化刺激(unconditioned reinforcing stimulus)と、条件強化刺激(conditioned reinforcing stimulus)という分類の仕方である。
無条件強化刺激とは、食べ物(正の無条件強化刺激)、暑さ、寒さ、痛み(負の無条件強化刺激)などのように、そもそもそれ以前どのような経験がなくとも、生まれつきオペラント行動を強化するものをいう。条件強化刺激とは、無条件強化刺激と一緒に提示された刺激で、その無条件刺激がなくとも、強化する刺激になったものをいう。2次的な強化刺激である。たとえば、おこづかい、シール、ほめ言葉(正の条件強化刺激)や「危険」という立て札、赤信号(負の条件強化刺激)などである。
条件強化刺激は、無条件強化刺激と違って、数や種類が豊富にあり、手ごろに便利に使用できる。ブラッシング指導の際に、子どもが好きなシールを使ってブラッシング行動を強化するのは、条件強化刺激をうまく使った例である。
3)自分で強化刺激を管理する
自分で強化刺激を与えたり与えなかったりして、強化スケジュールを自分で決めた場合、他人からそのようにされるよりも、強化しやすく、強化がなくなった後でも、つまり消去後も、行動がより強く持続する。
ブラッシングの例でいうと、どのような場合にシールを貼るのか(強化スケジュールの計画)を子どもが自分で決めたり、お母さんではなく子ども自らがシールを貼った方が、効果が高くなる。